オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ州 経済指標 2025年版

令和7年7月31日
 オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ州商工会議所は、毎年「オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ州経済指標(Chiffres Clés Auvergne Rhône Alpes)」を公表しています。同資料2025年版の「要点」及び「2024年の動向」の日本語訳は以下のとおりです。

要点

●フランス最大の工業地域:オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ(AuRA)州では55,000拠点で52万人以上の雇用(各種雇用形態を含む)を創出しており、国内最大の工業地域。工業セクターは同州の付加価値の17.8%を創出(フランス全体では13.0%)。管理職の23%が工業セクターで勤務している(フランス全体では16%)。
 
●フランス最大の低炭素エネルギーによる発電地域:フランスにおける原子力発電の26%、水力発電の45%を供給している。
 
●国内第2の経済規模:AuRA州の2022年の国内総生産(GDP)は初めて3,000億ユーロを超え、EU内の地域圏として第4位、フランスにおいて第2位(フランスのGDPの11.6%)。これはEU加盟国で第15位のフィンランドのGDPを上回る。一人当たりGDPにおいてもフランス第2位(37,271ユーロ)。
 
●国内第2の技術革新地域:AuRA州は今回初めて同州のGDPの3%を超える93億ユーロを研究開発に支出(2022年)。民間セクターにおける仏人研究者の16.4%がAuRA州の研究開発拠点に勤務している。国内の特許申請数の19.5%がAuRA州で申請(2023年は2,132件)されている。また、AuRA州は、2016年から2024年までの研究開発投資額で欧州において第5位。
 
●国内第2の高等教育地域:AuRA州には374,142人の学生が高等教育機関に在籍し、全国の技術系学生の14%(24,200人)、全国の技術短期大学の学生の15%及びビジネススクール学生の14%が同州で教育を受けている。AuRA州の労働人口(25~54歳)の48.7%が高等教育修了者であり、フランス国内平均の43.2%を上回る。
 
●国内第2の人口:AuRA州の人口は800万人を超えており(2024年)、オーストリアやスイスとほぼ同規模。リヨン都市圏の人口は約230万人で、パリ都市圏(720万人)に次いで人口が多い。
 
●国内第2の民間雇用:民間部門における雇用率は68.2%で、有給雇用者数は249万人(2023年末時点)であり、国内第3位のヌーヴェル・アキテーヌ州より61%多い。
 
●国内第2の起業地域:2023年には12万822社が起業した。
 
●国内第2の輸出地域:輸出額及び貿易財を商う輸出企業数は国内第2位の24,299社。このうち工業製品の輸出企業数は国内最多。
 
●国内第2の観光収入地域:AuRA州の観光収入は、フランス全体の観光収入の14%を占める212億ユーロ。特に、スキーリフトから得られる歳入の82%はAuRA州がもたらしている。
 

2024年の動向

●フランスの2024年の経済成長率は2023年と同じく1.1%だったとみられる。フランス銀行による2024年末の予想によれば、2025年の経済成長率は0.9%に減速するが、不確実性が高い状況下にあるため、これを見直す可能性もある。
 
●フランスにおけるインフレは2024年に収束し、ユーロ圏消費者物価指数(HICP)は年平均で2.4%に安定化したとみられる。2025年には2%を下回ると予測(年平均で1.6%、エネルギー及び食品価格を除くコアインフレ率は2.2%と予測)。
 
●付加価値税(TVA)申告データ(フランス公共財政総局)によれば、景気減速を背景に、2024年1月から9月末までのAuRA州における企業の総売上に大きな増加は見られず、前年同期比で0.2%増となった。全体として低調であったが、分野によって異なる様相を呈している。宿泊/飲食サービス業では3.2%増、運輸業/ロジスティクスでは2.4%増となった一方、工業は1.7%減、商業及び建設業では2%減となった。
 
●税関データによれば、2024年1月から9月末までのAuRA州の輸出額は2.1%減少したが、輸入額は3%増加した。9月末時点で、過去12ヵ月間の輸出額は707億ユーロであった。貿易相手国の上位5カ国(ドイツ、イタリア、スペイン、ベルギー、米国)は前年と変わっていないが、イタリアとスペインへの輸出比率が増加した。
 
●2024年の建設業を巡る動向は引き続き厳しい状況にあった。2023年10月から2024年9月までのAuRA州の住宅着工件数は前年同期比で16%減少。建設許可(将来の住宅のみ)は2005年以来の最低水準となった。建設中の建物の床面積は1%減少した(出所:環境・地域整備・住宅局(DREAL))。
 
●観光業に関しては、2024年の宿泊数は2億8,500万日となり、大幅に増加(3.2%増)した。上半期は特に活況を呈したが、ピークシーズンである夏季は概して安定的であった。宿泊施設や観光マネージャーは2024年の夏季を好意的に評価している一方、アウトドア活動関係者とレストラン経営者の意見は異なっている。北米地域からの観光客数が増加した。リヨンとサンテティエンヌは、パリ2024オリンピックの開催地となったことによる大きな影響がみられた。また、良好な雪質により、冬季スポーツ・リゾートの客室稼働率はクリスマスシーズンに高いレベルとなった。
 
●2024年1月~9月、航空輸送は引き続き回復傾向にあり、前年同期比4.4%増となった。特に、これを牽引したのはリヨン・サン・テグジュペリ空港で前年同期比4.7%増、国際線旅客の比率は過去最高の78%に達成した。シャンベリー・サヴォア・モンブラン空港でも航空輸送は増加している。
 
●2024年9月末までの12か月間のAuRA州における起業数は、前年同期比で7.8%増となったが、企業倒産数は24%に増加した。
 
●2024年9月末、AuRA州における有給雇用者数は安定していた。工業と第3次産業(臨時雇用を除く)では0.5%増加であったが、建設業と派遣労働はそれぞれ1.5%と7.3%の減少となった。