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最近の行事報告

  • リヨン領事事務所活動報告(平成27年1月25日号【第19号】)

     

     在リヨン領事事務所の小林龍一郎です。

     2016年になりました。本年も何卒宜しくお願い申し上げます。
     今年は暖冬で、リヨンの新年も例年よりは気温が高いようです。フレンチアルプスのスキー場では雪不足でスキー宿は困っておられるところも多いとか。その後たっぷり雪に恵まれたようですけど。リヨンの元日はあいにくの曇り空で、新年の御来光は拝めることもないと思い、朝早くソーヌ川を散歩するにとどめました。実は、大晦日も出勤で、元日こそお休みを頂戴しましたが、4日の仕事始めまで年末の慌しさを引きずる有様で、昨年一年間の疲労を取り払う余裕も術もなく、連続する時間のほんの幾片の自分の時間を手に入れただけでした。それでも、管内で邦人が巻き込まれるような大事件がなかっただけでも、幸せに思うべきでありましょう。

     一年の始まりは元日にあり、一日の始まりは朝にある。ということで、正月二日は真っ暗な中、早起きをしてここ数年恒例としている、新年の書初めを行いました。姿勢を正し、小一時間かけて墨を練り墨汁を作り、その間何度も書きたい言葉を反芻させます。今年認めましたのは、「将必先己」という四字。「将、必ず己を先にす」、と読みます。中国古代の兵法書「尉繚子(うつりょうし)」から取りました。近代組織論では、上司は「する」より「させる」のが仕事、と習うことがありますが、中国の古代思想では、指導者自らが動くことが美徳であるとして、リーダーのストイシズムを試します。戦国時代の一騎駆けの美学は、この思想の影響下にあるのかもしれません。私の場合はもっと単純で、自分でできることは自分でやって、忙しいスタッフの手を徒に煩わせないようにしようとその程度でありますが、簡単で難しいことを新年に誓いました。

     さて、手前のお話はこのくらいにして活動報告に入らせていただきます。本年も簡単な報告を可能な限り翌日迄にFACEBOOKに、所感を含めた詳細な報告を、月に2回を目標にホームページに、書き下ろして参ります。在リヨン領事事務所の奮闘ぶりを御覧いただき、当事務所を皆様の身近に置いて頂けると共に、叱咤激励を頂戴できれば、小官のみならずスタッフ全員にとりまして元気の素でございます。

     1月4日(月)は、仕事始めの館内会議を行いました。仕事始めでは、小官から今年の大まかな年間計画と業務方針を共有し、昨年一年間頑張って作った良い流れを止めず、2016年も引き続き、小粒でもピリリと辛い山椒のような切れ味の良い外交と確実な行政サービスを実施していこうと誓いを新たにしました。
     1月は、フランスでは多くの組織で、新年の挨拶(cérémonie des vœux)がございます。一年間、とにかく激しく動き回りましたので、当事務所は嬉しいことに多方面から招待状を頂きます。他方、体は一つしかございませんので、原則として直接的な知り合い、お世話になった方、我が方の天皇誕生日祝賀レセプションに出席して頂いた方のセレモニーに限定して出ることにしております。年始から出席したセレモニーは、4日(月)コロン・リヨン市長兼上院議員、5日(火)リヨン第2区長とリヨン第6区長、6日(水)ヴィルフランシュ・シュール・ソーヌ市長兼国民議会議員、7日(木)ローヌ県知事、14日(木)リヨン第4区長とヴィルバンヌ市長、19日(火)ドニャン=ソージュ・リヨン・首都圏副議長、ヴォキエ・ル・ピュイ・エン・ブレ市長兼オーベルニュ・ローヌ=アルプ州知事、21日(木)アバド・アン県議会議長兼国民議会議員、そして、23日(土)ギヨトー・ローヌ県議会議長兼国民議会議員と、11件のセレモニーに出席させていただきました。
     ペリュ・ヴィルフランシュ・シュール・ソーヌ市長、アバド・アン県議会議長、ヴォキエ・オーベルニュ・ローヌ=アルプ州知事、そしてギヨトー・ローヌ県議会議長のセレモニーでは、「日本の領事がわざわざ出席してくれたことに心から感謝する、大きな拍手を!」とか「日本の領事が初めてこうして出席してくれたことに感激した、心から賞賛したい!」とか「日本は素晴らしい魅力あふれる国で、その国の代表を迎えることは今年一年の最初の喜びである!」とか、何百人もの地元市民の前で、わざわざ言及して下さり、大変な歓迎ぶりでこちらの方が感動しました。誠に外交官冥利に尽きます。

                                                

    (左:コロン市長の新年会でのVœux)
    (右:リヨン六区の新年会で挨拶するケペネキアン・リヨン市文化担当助役)

    (左:ヴォキエ市長兼オーベルニュ・ローヌ=アルプ州知事のVœux)
    (右:アバド・アン県議会議長のVoeux、ヴォキエ州知事も来賓で来られておりました)

    (左:ヴィルフランシュ・シュール・ソーヌ市の新年会、市長はペリュ議員)
    (右:ギヨトー・ローヌ県議会議長の新年会、500人を超える大人数でした)

     1月7日(木)は、リヨン西方、車で1時間半の位置にある、ロワール県サヴィニュー市(Savigneux)のクリストフ・ブルトン(Christophe Bretton)市長の招待で同市を訪ねました。ブルトン市長は、隣町のモンブリゾンで行う日本文化紹介行事(マンガ・コスプレ・ジャポン)の場でお会いして以来、天皇誕生日祝賀レセプションにも毎回出席頂くなど、大変日本を大切にしておられる市長です。サヴィニュー市は人口3400人余りの比較的小さな町ですが、三菱重工の海外グループ会社であるプリメタル・テクノロジー・フランスという日系企業があります。従業員約400名の巨大金属加工工場で、約100年前に仏企業が工場を開設し、これまで他の欧州企業に譲渡されるなどしましたが、数年前に三菱重工の資本傘下に入ったとのこと。サヴィニュー市長の説明では、サヴィニューの主要産業は農業で競馬調教施設とゴルフ場がある他は何もない。このプリメタルがサヴィニュー市民の約180名の生活を支えているとのことで、日本に大変感謝していると述べておられました。今回小官を招待したのは、プリメタル社で働く従業員の方々に勤続功労賞を授与する式典があり、日本領事のプレゼンスを得たいという御要望からでした。プリメタル社の幹部と一緒に、勤続20年、30年、40年と順番に功労賞をお渡ししていくのですが、お一人お一人のお顔が大変いい顔をされており、晴れがましく、同時に会社に対する愛情、そして自分の仕事に対する誇り、といったものを感じて、素晴らしい人たちだなあ、こういう方々がフランス経済を支えておられるのだと思い、私も大変感激いたしました。プリメタル社は、本年4月から日本人の方が社長として就任されるということで、ロワールの緑の大地には、日の丸が新社長のお越しを待っているかのごとく、はためいておりました。

    (左:サヴィニュー市のブルトン市長と小官と同じ年です)
    (右:プリメタル社の正面には日の丸がはためいていました)

    (左:工場の様子)
    (右:勤続功労賞を受賞された皆様と)

     1月13日(水)は、クレルモンフェランを訪ね種々用事を済ませました。最初に、クレルモンフェランで邦人コミュニティのお世話をしておられるいちご会(日本人会)の古賀会長及び日本人補習校(認定申請中)の楠校長と一緒に、2016年の行事計画について意見交換をさせていただきました。いちご会は一期一会をモットーに、櫻井佐友里さんがクレルモンフェランにお作りになった協会で、古賀さんが二代目の会長です。
     クレルモンフェランはミシュランの街で知られていますが、大学間等の学術交流も盛んで、日本からは、熊本大学、お茶の水女子大の学生が地質学、哲学の研究で訪れ、海洋技術研究センターとマグマ火山研究所の共同プロジェクトも検討中であるとか。帯広畜産大学や広島大学とも今後交流が拡大されていく可能性があるそうです。
     日本で本稿をお読みになられている方は、クレルモンフェランってどういう印象をお持ちでしょうか。クレルモンフェランは哲学者パスカルを産んだ文化都市であり、ミシュランで有名な産業都市、さらにはカエサルを破ったガリア人の街であり、火山の街、様々な顔を見せる魅力溢れる街です。クレルモン=フェランを代表する建物は、黒いノートルダムと言われるノートルダム大聖堂であります。ゴシック様式のその堂々たる様子は、パリのノートルダムとはまたひと味違う大変魅力あふれる教会です。ステンドグラスも素晴らしく、是非一度お訪ねいただきたいです。その際には、ピュイドドーム山にも足を運ばれたく、一般車の排気ガス公害を避けるべく2012年に開通した登山電車で、約30分で山頂まで登れます。途中ヴォルヴィックのラベルに描かれている山を見つけられるでしょう。また、少し北上すれば、水のシャンペンと言われるシャテルドンを生産するシャテルドン村にも参れます。この辺りは極上水の産地です。
     その後、合谷夫妻率いるJANA(Japon Auvergne Nippon Auvergne)と、2月、3月にオーベルニュ州で企画する大型日本文化紹介プロジェクト「JAPONISSIMO」について意見交換を行い、JANAにも協力を頂いている、オーベルニュにおける和牛紹介セミナーの打合せに、オーベルニュ州畜産協同組合とシャマリエール公立料理高等学校を訪ねました。そこでは、3月14日に予定している石垣牛紹介イベントについて関係者間会議と会場下見を行いました。オーベルニュ地方で有名なのはシャロレ牛という種類の牛ですが、近年和牛の評判も浸透してきており、日EU間での自由貿易協定をにらんで、和牛に対する関心は非常に高いとのことでした。攻めの農業を実践する石垣牛の金城利憲氏、農業畜産地帯であるここオーベルニュで行う講演会兼試食会は大変な評判を呼ぶに違いありません。私は、今後日仏のWIN-WINの農業協力に繋がっていくことを祈っています。

    (左:いちご会古賀会長と)(右:黒いノートルダム)

    (左:ノートルダムの美しいステンドグラス)
    (右:料理学校の壁には有名シェフのサインが、ミッシェル・トロワグロがありますね)

    (左:和牛紹介セミナーの第一回打合せです。雰囲気がいいのできっとうまく行きます)
    (右:ここで和牛講演会を行って頂きます。ロジをやっていた頃の勘が戻ってきます)

     1月14日(木)リヨン2区のギャラリー28で行われた、備前焼陶芸家・藤原和個展のベルニサージュに出席し挨拶を行いました。挨拶の中で、藤原氏から頂戴したメッセージを紹介し、備前焼を火と土の芸術としてその魅力を伝えました。備前焼は岡山県備前市を発祥とする陶芸で我が国を代表するひとつ、実に1300年の歴史を湛えます。来場されたお客様からは、藤原作品の数々に感嘆の声があがりました。また、今回はフランス人盆栽家ブリュノ・ヘレー(Monsieur Bruno HELLER)氏の作品とのコラボも行われ、ギャラリーは日本の雰囲気に包まれておりました。
    同郷の好で藤原和先生にお話を伺う機会もままあります。焼き物の面白さを説明頂いたときには、それは時には窯変であり、時には土との出会いであると。そして、「備前は使ってナンボだから、こけたら繋いであげるから」、という言葉には、一人一人の一回一回の食を豊かに、酒を豊かに、生活を豊かに拡げることが作陶家のもう一つの喜びであり、他者と共に生を共有する醍醐味を味わうのだなと思いました。
     備前焼には食い物が似合います。以前撮影した写真も何枚か御紹介します。

    (藤原和先生の作品もはるばる海を渡ってきました。海と言っても瀬戸内海ではありません。写真提供:©Miho MATSUMOTO)

    (左:ギャラリー28のオーナー、ボナバンチュールさんと。写真提供:©Miho MATSUMOTO)
    (右:挨拶では、藤原和先生からのメッセージもお伝えしました。)

    (左:ギャラリーに来て頂いた、左からムットさん、小林、ペローさん、柏木さん)
    (右:備前は食べ物とのコラボが一番映えます。このスイカ、美味しそうです。)

    (左:瀬戸内海のガザミ(ワタリガニ)と。)
    (右:おいしそうなオニギリと。お皿は人間国宝藤原雄の作品です。)

    (左:これが備前の登り釜、何週間もかけて固く焼しめていきます)
    (右:藤原和先生御夫妻と(2015年夏))

                                               

     1月17日(日)12:30から、リヨン市内ホテルで、在リヨン領事事務所主催、平成28年新年賀詞交換会を大変賑々しく開催致しました。リヨン事務所管内のオーベルニュ・ローヌ=アルプ州で活躍される企業人、日仏協会、日本人学校、そしてこれまで日本人の活動を支えて来られた重鎮方、日本人会の皆様を中心に、日本人の活動を支えるに中核となる100名の皆様にお集まり頂きました。また来賓として、パリから、在仏日本商工会議所中江剛介会頭(三菱商事)、成田兵衛副会頭(VIZ MEDIA EUROPE)、青柳一郎副会頭(富士通テクノロジー)、神宮寺勇副会頭(JAL)、山田裕隆事務局長にお越し頂き、リヨン管内の多くの企業関係者と懇談頂きました。また、JETROパリの大西麻紀子職員、日本から御出張中のT&Tジャパンの二瓶徹社長にも参加頂くことができ、大変盛大な会となりました。                      
     大変お忙しい皆様においで頂き本当に嬉しく思いました。リヨン事務所として初めての賀詞交換会であり、成功しなかったらどうしようと内心案じておりましたが、皆様のお蔭で無事に終えることができました。皆様の中には、既に入っていた予定を曲げておいで頂いた方や、日曜日でありますから御家族の御理解を得ておいで頂いた方も多くおられたとお聞きしております。この場をお借りして、心から感謝申し上げます。そして、皆様のために頑張って行こうと、我々職員一同心を新たに致しました。                      
     米山悦夫会長の御挨拶にございました、今日という日は二度とない一日であり、かけがえのない瞬間である、なるほどその通りであると改めて思いました。この一日を大切にしていきたい、正に日々是好日であろうと思います。そして、中江会頭の仰る通り、本年は様々なことが起こる一年であるがゆえに、しっかりと皆で心を一つにして、このフランスという地で共に生きる御縁を大切にしていきたいと思います。締めの挨拶を頂いた高橋伴和JTEKT社長は、この新年会のために日程を変えて、昨日日本からお戻りになったそうです。こういう一つ一つの真心を大切にして、我々一同も、「まこと」の心を持って、皆様が安寧の下にこの素晴らしいフランスという国で御活躍頂けるように、日々、黙々と、只仕事に打ち込んで参ろうと思っております。                      
     今回やむを得ず欠席となった方におかれましても、定例行事として、来年も年明け一月に賀詞交換会を開催致しますところ、宜しく御出席の程お願い申し上げます。                      
     在リヨン領事事務所の管轄地域は、オーベルニュ・ローヌ=アルプ州になります。ここには、20を超えるクラスター、競争力拠点のある産官学の研究拠点、フランスで二番目にGDPを稼ぎ出し仏経済の鍵を握る地域、GDP/Cベースで、欧州6位とも言われています。問題となっている失業率もフランス全土で最も低く、そしてリヨンは昨年フランス人が選ぶ最も住みやすい街に選ばれました。邦人数、日系企業数共に、2003年以来増加の一途で、2015年末の調査では、邦人数3473名、日系企業数は個人事業主も含めて155社を数えます。この巨大地域を担当させていただいているのは、在リヨン領事事務所の本官2名、現地職員5名という世界最小在外施設となっています。                      
     当然ながら我々だけでは何もすることはできません。皆様のお力が必要です。どうか、我ら在リヨン領事事務所を皆様のものだと思って、昨年に引き続き、御支援、御鞭撻を宜しくお願い申し上げる次第です。我々所員一同、連日連夜の残業に耐え、週末も犠牲にして日本の為、在留邦人のために、文字通り私心を捨てて働いております。                      
    【新年賀詞交換会の写真は全て著作権がございます。©Miho MATSUMOTO】                      

    (右:小林の挨拶、今年の目標を述べました)
    (左:米山日本人会会長の御挨拶、日々是好日は小林の座右の銘です。)

     

    (左:中江在仏日本商工会会頭の御挨拶、グローバルな視点からのお話に感動しました)
    (右:これまで日本人社会を牽引していただいた山口事務局長、前会長です)

    (左:鏡割りは、正月だなあ、めでたいなあという気持ちになる不思議な行事です。)
    (右:それで、大抵は勢いが良すぎてこうなります。2016年も気合全開で!)

    (左:マス酒は酒の味を一番おいしく引き立てます。当ては塩で十分。)
    (右:ということで、新年会が始まりました。皆さん本当に楽しんでいただけました)

    (左:お料理は、UTAKOさんの作品、とっても美味しかったです。)
    (右:Fromagerie Tête d'orのチーズの盛り合わせ、超リヨンです!)

    (左:中江会頭(中)とクレルモンフェラン日本人会の皆様、右から江東靖志さん、楠ともかさん、古賀ケネスさんと)
    (右:商工会の幹部(左から成田副会頭(VIZ MEDIA EUROPE)、山田事務局長、青柳副会頭(富士通テクノロジー))

    (左:ご歓談中の皆様、JALの神宮寺支店長(中央)もパリからおいで頂きました)
    (右:左から西川由里子先生、小林、山口剛一先生、栗林佳代先生)

    (左:皆さん楽しそうです。ザンデル先生のレシピは小林家の定番料理になってます。)
    (右:今回、和食を用意してくれたUTAKOさんとFLAIRの渡辺さん。)

    (左:今回ボランティアで写真撮影をして下さった写真家松本美穂さん)
    (右:お雑煮は大変な人気で皆さん喜んで食べておられました。餅は元気が出ますね)

    (左:JTEKTの高橋社長に締めの言葉を、含蓄に富む素晴らしいスピーチでした。)
    (右:新年会は準備期間が天皇誕生日レセと重なるので本当に準備が大変でした。)

    (こんなに多くの方にお集まりいただき、心から感謝致します。来年は、在仏大の形に倣い、邦人は天皇誕生日レセではなく、新年会にお呼びするような形を考えております。)

     

    (在リヨン領事事務所のスタッフ。西村パスカルさんがいませんが、これだけの数であれだけ多くの事務をこなしています。スーパーマン、スーパーウーマンの皆様で、私小林は、赴任、応援出張で、これまで多くの大使館、領事館を見て参りましたが、在リヨン事務所は、掛け値なしで、世界最強の現地職員軍団だと確信しています。左からJean-Charles Reynaud職員、江頭海咲副領事、江口敦子職員、平野道子臨時職員、今川美生職員、小林、小林夫人、穴見千穂職員)

     

     1月23日(土)、リヨン市内第三区にありますMaison du Judoで行われたローヌ=アルプ州柔道連盟の鏡開式に出席して参りました。
     挨拶では、明治維新になり、武士道が武道に変化し、それが青少年の人間教育の側面を持つように変容したことを説明、その流れの中で特筆すべき人物として、剣の世界では山岡鉄舟、柔の世界では加納治五郎を挙げ、彼らの思想がいかに豊かな人間を育てることを求めているかに触れました。柔道を、単なる勝敗に拘るスポーツではなく、人間修練の場としての武道として、このフランスでさらに広めていただけるよう、柔道連盟の幹部にお願いしました。
     柔道連盟の会長から、「領事には木槌でお菓子を叩いて壊してもらいます」と言われ、前に連れて来られてよく見ると、お米の菓子をお餅のように丸く作り、そこにホワイトチョコレートをまぶして作っていました。木槌はよく見ると、裁判官が使うようなカワイイ木槌でした。どれもこれも、少し日本のものとは違いますが、工夫をしながら、できるだけ日本の伝統に近づけて、これを大切に守ろうという、日本の文化・伝統に対するリスペクトが伝わり大変嬉しく思いました。
     模範演武の後は、可愛らしい子供柔道家による寸劇でした。こういうところが実にフランス的であります。内容は、とあるフランスの貧しい農村が山賊に荒らされて困っている。そこに、二人の柔術家が現れ、農民たちに柔術を教える、めきめき強くなる農民たち、やがて、山賊たちとの決戦の秋が。柔術を習った農民は山賊をばったばったと投げ飛ばす。そして、農村には平和な日々が蘇りました、というもの。御承知のとおり、ベースは「七人の侍」で、子供たちは役に入り込み楽しそうに演じていました。
     武道の「武」という文字には、二つの矛を止めるという意味があります。武道は、物理的に乱暴者を抑え込む力を与え、心に勇気を授けます。守りたいものを守るために強くなる、子供の頃にそういう考え方を素直に教わったフランスの子供達は、将来立派な武道家になると僕は思います。自分も子供の頃に、同じように「力なき愛は無力なり、愛なき力は暴力なり」と少林寺拳法の道場で習ったことを思い出しました。
     昨年暮れに、講道館から高段位の先生が研修指導でフランスの柔道場に来られました。私はてっきり日本流の武道の精神を強調するのかと思いましたら、「自分はフランスでいいものを盗んで日本に持って帰るつもりで来た」と最初に話されました。
     確かに、フランス柔道はスポーツとの外縁の整理が上手く出来ていないという印象を私も持っていましたが、実は認識違いではないかと思い始めました。勧善懲悪は子供に宿る最強のロジックで、誰もが仮面ライダーやウルトラマンに夢中になるのはそれが理由です。そして、武道を通して武道家の中に一本通っていなければならないのは、卑怯を嫌い、正義を貫く、という強い信念です。日本の幼年武道人口が毎年減少している中、このフランスの「JUDO」のあり方に確かに学ぶ点も多いと思いました。

     

     

     

     

       

     1月24日(日)グルノーブルで行われたグルノーブル・イゼール日仏友好協会(グルノーブル日本人会)主催の新年会に出席して参りました。約半数はフランスの方でしたが、皆さんの日本に対する情熱、愛情は計り知れず、日本語を自由自在に操っておられる方も実に多く、いやあ、これほど日本の魅力が浸透しているのだなあと改めて、大感動しました。
     外交を自分の職業に選んでから、首脳間外交に何度も取り組み、これを成功させることが最大の外交であり、外交自体が完遂したと思った自分もおりました。国と国の交わりにおいて政府が担う部分は重要でありますが、交わりの総体から見るとその表層の一部だとも思えます。かくして実体は、一人一人の日本人が、世界中で、様々な苦労にもめげず、立ちはだかる不条理と闘って、日本らしさを捨てず、日本文化を伝え、伝統や歴史を伝え、日本人として外国の方の心を丁寧に捉えてきたからなのだと気づき、本当に頭が下がる思いが致します。パリで勤務していた時には、こういう草の根の日仏交流の生の姿になかなか触れることがなかったので、毎日が学びの連続だと感謝しています。
     三味線で奏でるヨサコイ節に鼓手を打ち、野球拳で踊り、黒田節では大酒飲みの武士を演じるフランス人たち、国を離れてもう何年目になるのでしょうか、ジーンと心に響くものがありました。その他、茶の湯のセレモニー、盆栽の説明もあり、最後は子供達お待ちかねの餅つき大会がありました。小林家では、毎年12月28日にお餅をついていました。子供の頃から餅をつくのは私の仕事でしたが、10年ぶりに抱え上げた杵は思いのほか重く、それでも、ついているうちに体に馴染んだリズムはすぐに甦り、文字通り、昔取った杵柄、でありました。でも、夢中で餅をついているうちに、いったい自分はどこにいるのかわからなくなり、岡山で家族と餅をついているのだろうかと白日夢に陥りそうになりました。ペッタンペッタンと、グルノーブルのはずれメイラン市には、心地よい音がいつまでも続いていました。    

    (左:小林の挨拶。リヨン日本人会から米山会長、ボワロ副会長、篠田理事も同席されました。写真提供©Fabien LOUIS)
    (右:三味線の音色で、吉田グルノーブル・イゼール日仏協会会長と野球拳を舞うジェシカ・ボワロリヨン日本人会副会長。)

    (茶道のデモンストレーションも大変見事でございました)
    (写真提供:© Fabien LOUIS)

    (左:盆栽愛好家の方から、盆栽とはそもそも何かとの講義を受けました)
    (右:見事な三味線を披露されたセラム由香さんと音色に合わせて酔客を演じたパスカル・サバチエさん(餅つき名人))

    (左:昔取った杵柄とはこのことを言います。)
    (右:早くつかないと餅が冷めちゃうぞー、実に楽しい餅つきでした。)

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